冒頭の基礎理論、エンディングの基礎理論


 難易度 : ★ ☆ ☆ (初歩)

 習得前提技術:特になし



 物語が終わったからと言って、登場人物の人生まで終わるわけではない。同じように、物語が始まる前にも、登場人物の人生は存在していたはずだ。
 ゆえに大事なのは、どこからどこまでを語るか。語り手には、長大なエピソードを一部だけ切り取る、いわゆる《トリミング》の作業が必要となる。

 トリミングとは例えば、写真の不要な部分を取り除いて画面を整える作業のことだ。不要な部分を取り除くことで写真は、撮影したかった対象が引き立つことになる。

 冒頭とエンディングをどこからどこまでに設定するか、と言う作業とは物語をトリミングすると言うことなのだ。
 物語はトリミングにより、語り手が何に注目していて、また同時に、何を無視しているのかが明らかになる。
 つまりは物語の《焦点》が定まってくる。

 何かを「語る」と言う行為は同時に、何かを「語らない」と言うことでもあるのだ。何かを選択することで同時に反対の手で、何かを捨てていることを、語り手は意識していなければならない。

 冒頭とエンディングをどこに設定するかにより、語り手が物語に対してどのような態度を取っているのか。自然と導き出されることになるし。
 語り手が物語に対して、どのような考えを抱いているかによって、冒頭とエンディングの場所も自然と導き出されることになる。
 それはつまり、その物語が何のために語られるのか、と言う語り手の意思表示ともなるのだ。

 物語は一種の《箱庭》のようなものだ。いくらリアリティを追求しようとも、物語が「良く出来た作り物」から脱することは出来ない。
 語り手にやれる仕事は、物語の「作り物」としての完成度を上げることだけだ。





 ……と言うこの問題には、物語に関する多くの命題が含まれている。
 例えば、語り手とは何なのか。物語内に登場するキャラクターとは何なのか。「語る」と言う行為とは何なのか。また同時に、「語らない」とは何なのか。
 そして、フィクションとは何なのか。物語とは何なのか。

 皆さんも一度、このことについて考えてみると、面白いかもね?


 応用範囲 → 構成



Back to Menu