物語の速度・規模 その4

        テンポの種類(2)




■要約法

 どのような状況が起こったのかを、あまり場面をイメージさせない方法で提示する場合を《要約法》という。
 文章のある部分が、その再現する内容に比べて短すぎる場合。言説時間が物語内時間より短い場合。長い物語内時間が、短い言説時間に対応する場合。
 こうした場合に要約法は成り立っているといえる。

《例》
いろいろあったが、今度の旅は無事に終わった。

 要約法は、情景法から省略法までの物語の速度の範囲をカバーするために多用されている。


■伸長法

 《伸長法》は映画でいうところの、いわゆるスローモーションということになる。
 文章のある部分が、その再現する内容に比べて長すぎる場合。言説時間が物語内時間より長い場合。長い言説時間が、短い物語ない時間に対応する場合。
 こうした場合に伸長法は成り立っているといえる。

《例》
この間、たった一秒である。

 じっくり書きたい対象があり、その周囲の状況も押さえておきたい場合にには、まず対象でない部分について、何文字か、何行かを費やす。この量が伸長法として、ほぼ映画における時間経過に匹敵する。沢山書けば、ゆっくりと舐めるように撮影したかのような効果が出る。
 少ししか書かなければ、要約法として短い時間しか見せなかったのと同じ効果がある。文章の分量と、その表す内容をうまく調整しよう。


 以上、テンポの種類は映画など他のメディアと大して変わりはない。ただ向き不向きがあるだけだ。全てにいえるのは、言説時間と物語内時間では違う流れがあるということを利用し、最大限に利用しているということだろう。

 ちなみに「巻き戻し」とは、そういう演出を行うことによって「回想」という形の物語内容を進めさせるためにある。時間軸が戻っても、物語まで戻ったりしない。


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