奥行きのある風景を描こう:6

         俳句のカットチェンジ




 さてボクは前章で、俳句とは風景を描いた叙景詩であるといいました。しかも俳句は五七五の、短い定型詩。短い中での最大効果を狙うための構成となると、限られてきます。
 そして俳句には必ずではないのですが、多用されている構成法があったりします。実は、その構成法こそが風景描写に、奥行きを出す効果を与えているのです。
 試しに、有名な俳句を分析してみましょう。

《例》
1 : 古池や蛙飛び込む水の音
2 : 柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺

 1の俳句は、まず「古池」という遠景から入っています。そして「蛙」という小さなものへのクローズアップ、つまりは近景にカメラワークがチェンジしている。
 2の俳句で、「柿食えば」というのは恐らく俳人である、自分自身のことでしょう。それが鐘が聞こえて、ここは「法隆寺」なのだと、自分事から景色が広がる。つまりは近景から遠景になる。

 つまり俳句では、遠景と近景、近景と遠景。距離の異なるふたつのカットが途中でチェンジすることで、効果的になっている。これが風景に奥行きを出すコツなのです。


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