他に類を見ない企画を立てよう その8

                生涯の戦い




 ちなみに今回の、仮面ライダー練習ならば、企画としてどんなネタ性が期待できるのでしょうか?
 これは読者に「また、あの作者がバカなことやってる」と注目されるためのもの。クリエイターとして、他の同業者と明確な違いを出し、作家としての立ち位置を固めるためのもの。
 そう。……企画と言っても、実は最も創作的なテクニックだったわけです。

 本当の企画はもっと辛いに決まっています。ましてや商売にするなら、失敗を重ねていれば貧乏生活、果てには飢え死にが待っている。お腹が減ったり、死んだりしたら、小説も書けなくなりますよ。
 芸術だ、文学だと、自分がやりたいことだけで世間を渡って行ける幸せを。どれだけの人間が甘受できるものか。
 だって、頑張っているのはこの世であなたひとりではない。あなたより才能のある、あなたより努力している人が、世の中には大勢いるのです。

 自分の中身と、今という時代が、ぴたりと一致する幸せなんて、恐らくは一生のうち何度もありません。むしろ、一度も経験せず終わる方が大半でしょう。
 たとえネタとして話題になったとしても、内容が伴わなければ、すぐ飽きられて忘れられる。きっと、手にとってもらえてから始めて、書き手の力量が問われるのです。
 だから書き手は誰もが、チャンスを逃さぬよう。「その時」が来た瞬間のために、腕を磨き続けます。幸運を掴むため、掴んだ幸運を逃がさないため。

 今回の練習だって、難しめの条件を提示しましたけど。じゃあ苦労したからといって、ヒットするとも限らないし。
 こればかりは、どんな大文豪でも滅多に一致することはありません。果たして今の自分は読者に受け入れられているのだろうか。創作をやる人間なら全てが、老いて死ぬまで一生悩み続けることになります。

 自分が書きたいものと、読者の読みたいものとが、同じとは限らない。
 永遠の命題ですね。けど、この苦悶こそがクリエイターをやる醍醐味。人の心ほど不可解で、だが面白いものもない。いやあ、だから表現活動はやめられませんな。


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