自分が本当に書きたいものを知ろう その6 本当の自分が本当に書きたい作品 |
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最後にひとつ。小説書きとしての奥義を皆さんにお教えしましょう。 奥義といっても、禁則になります。誰もが思わずしがちな「それ」に注意することで、あなたは大いに危険を回避できるようになるでしょう。 「それ」とはどのような事項なのか。すなわち 「自分が本当に書きたいネタは何なのか」とか「自分が書きたい絶対唯一の作品とは何なのか」とかいいだしたら。かなりの危険信号です。 その書き手さんは近々、眼高手低に陥ってな〜んにも書けなくなります。 どうして小説に「本当の」「絶対の」「唯一の」を求めると、その人は作品が描けなくなるのか。なぜなら人の心は変わるものだからです。人の心ほど、不変とか無二などと相性が悪いものはありません。 仮に、そんなものが見つかったしたら、勘違いだと断言しても構いません。 常に細胞を入れ替え、変化し続けてこその命。「本当の自分」なんていいだしたら、その人は心の新陳代謝が止まりかけている証拠です。 ましてや同じ作品を二度出せば、読者はすぐ飽きてしまうもの。 表現者としてやって行きたいなら、好奇心のアンテナを広く、鋭敏に持ち、常に自分自身を作り替えてゆかねばなりません。 だって、あなたの人格だって、あなた自身が築き上げた「作品」なのですから。 あなたの人格そして人生という作品は、あなたが生きている限り、決して完成することはありません。きっと「自分作り」とは、やりがいのある、まさにライフワークとなるでしょう。 その助けとなるのが、マイリスト作りになります。マイリストは初歩中の初歩であると同時に。あなたにとって最強の敵……すなわち自分自身と戦う武器になります。 というわけで、まずは好きと嫌いを最低でも百個以上、集めましょう。すると気づくはずです。百個程度では、まだ自分なんて見つからないと。 行く行くは何千、何万項目も集めた時、あなたはようやく、自分で自分の姿を知ることができるはずです。 |