比喩講座 その1




 比喩には様々な使い方がある。直喩、隠喩、諷喩、提喩、換喩、声喩、擬人法と。だが今回そうした分類は無視させてもらいます。どのような種類があるか知りたい方は、自分で調べて下さい。国語の教科書にでも載っているはずですから。それよりも今回の講座では、比喩の根本原理について皆さんに知ってもらいます。
 もちろん比喩なんて、誰でも普段から使っています。特別に習うべきことなんてない、と思われる人もいるかもしれません。ですが、その思い込みが既に比喩について知らないという証拠。
 皆さんには比喩を知ることで、その余りの深さにウンザリしてもらおうと思います。

 まず比喩とは、ある物事を説明するのに、他の類似した物事を借りて説明する、という表現方法です。
 事例として「炎のような情熱」という比喩があったとしましょう。表現者は情熱の凄さを誰かに伝えたい。その凄さは燃え盛る炎に似ている。このふたつを結びつけて考えることにより、「炎のような情熱」という比喩ができました。



 上の図を参考にしてください。
 「炎のような情熱」という文の場合、《例えられるもの》は「情熱」であり、《例えるもの》は「炎」であるということになります。情熱が、炎に例えられているわけですね。

 比喩は必ず《例えられるもの》と《例えるもの》から成る。両者の間に類似性が見出されることで比喩となります。
 だが《例えるもの》とは、実際に「ここ」へ存在し、自分が直に見ているわけではありません。《例えるもの》とは、類似性から連想して思い浮かべるイメージのことです。《例えるもの》は、いま「ここ」にないものを模倣しているに過ぎません。「ここ」にあるのは《例えられるもの》だけなのですから。
 ならば《例えるもの》はどこに存在するかというと、どこでもない「ここ」以外のどこか「よそ」にあるということにる。つまり「炎のような情熱」の場合は、「炎」が《よそ》にある《例えるもの》で、「情熱」が《ここ》にある《例えられるもの》ということになります。

 というわけで、比喩の大原則をひとつ。比喩は多用し過ぎるな。効果が薄れる。




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