比喩講座 その7




 この比喩連鎖法を使えば、どうしても前後の文脈という繋がりが生じますから。異化の比喩を使っても、意味が通じやすくなるのではないでしょうか。
 代わりに、皆さんも薄々は気付いているでしょう。比喩の連鎖法を使いこなすのって、ものすご〜く面倒臭いです。

 普通に文章を書いていたって、次はどんな語彙を使おうか、どうやって描写しようか、選ぶだけでも疲れるというのに。比喩の連鎖法はその性質上、物語根本的な意味・イメージ構築へ密接に関わってくるため、ストーリーの全体的な構成も意識しなければならない。
 さらに前述したストーリーのテーマにおける《ここ》と《よそ》の使い方まで、比喩にリンクさせたとすると。文章という「部分」が、ストーリーという「全体」と相互に絡み合うことになる。

 つーまーりー。
 文章と、ストーリーと、テーマ。最低でも三本以上の文脈を、脳内だけで同時進行しなければならないわけです。
 しかも連鎖する比喩が増えれば増えるほど、脳内で同時進行しなければならない作業は、乗算的に無尽蔵に増えてゆく。
 楽しいですよぉ。皆さんもきっと「文章を書いていて死にそうな思いをする」ことが、比喩でも誇張でもなくリアルに体験できると思います。

 その割に、比喩連鎖法は読者の潜在意識下へ訴える技法のため。ほとんど気付かれません。コストは高くつく癖に、リターンが少ない。苦労ばかりで、誰も褒めちゃくれません。
 けど、そんなの書き手には関係ありませんよね。少しでも面白くできる可能性があるなら、どんな手段でも執るのが小説書きという人種ですから。

 後はどう比喩を連鎖しようが、各人の自由です。お手本の通りに書く必要はありません。
 例Cだって、最後の「生命」から、更に最初の「花」へと繋がったりするという手がありますよね。

 以上が比喩講座になります。基礎理論自体は難しくないと思うのですが。
 ただ、こうした比喩技法を知ったところで、あなたは上手くなれたりしません。逆です。元から上手な人でないと、この技法は使いこなせません。
 つまりは膨大な基礎力を持つ人でないと、比喩技法は使いこなせないし。そんな人であれば、元から比喩だけに頼る必要もない、と。
 というワケで、比喩技法はいつの日か使える機会があれば、使えると良いね〜って程度で。頭の片隅にでも覚えておけば良いんじゃないでしょうか。




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