コレクションSSを書こう その6

           リトマスとリアクション




 ならば、キャラを出すには。つまり違いを出せば良いわけですが。どうやって出すのかという問題になります。
 例えば技法的な話をすると。外貌描写には、印象描写と即物描写のふたつによる方法があります。

《例》
印象:どこかしら強い意志を秘めた瞳だ。
即物:夏の空のように青い瞳だ。


 しかし、外面だけではキャラクターを描くにも限界があります。例えば外見の同じ双子でも、個性の違いはあるもの。
 ならばその個性とは、どうやって出すか。

 人間、放置しているとジッとしているものです。さっきの双子の例ではないですが、外見が同じ登場人物では、ジッとして動かないでいると違いは出ないもの。個性を出すには、自ら動いてもらわなくてはならない。ならば、どうすれば動くのか。動機を作ってやれば良いのです。
 既に持っているモノを人は欲しくはなりません。欲しいモノは常に外にあります。欲しいモノがあるから動く。動機は外界にこそ生じるものです。 そこで作者としては、キャラクターに外から刺激を加えてやりましょう。すると反応[リアクション]が起こります。
 このような外部刺激を与えて反応を引き出す手法を《リトマス法》といいます。

 例えば考え事をしている人がいる。彼が何を考えているか、第三者である他人には内面が分かりません。
 そこへカレーの匂いがしてきて、腹の音が鳴って、本当は彼が空腹だったことが分かる。いっそのこと誰かが質問すれば、彼の悩んでいた問題を聞き出せます。
 設定にリトマスが投げ込まれることによって、どんなリアクションが返ったか。リアクションから間接的に内面的な事情が描かれる。こうして設定を紹介するのです。

《例》
●リトマス:ハンカチの畳み方
●リアクション:丁寧にアイロンがけ→几帳面な性格
●リアクション:くしゃっと丸めてポケットにつっこむ→粗雑な性格

 ドラマとは人間を描くことだといいますが。「人間を描く」とは、登場人物の外見を細かく説明したり、データをたくさん用意するだけでは不充分です。
 ある状況条件で、ある場面に遭遇した時、その人が実際にどんな行動をするか。心の葛藤がどうであれ、実際にやれることは一度にひとつ。
 個性によってリアクションが決まるのです。

《例》
●リトマス:もしも女の子が片思いの彼に会ってしまったら
    ↓
●個性:真面目な委員長 → リアクション:開口いきなり説教。
●個性:清楚なお嬢様 → リアクション:深々とお辞儀。
●個性:元気なスポーツ少女 → リアクション:元気に挨拶。
●個性:ツンデレ → リアクション:「べっ、別にアンタと会いたかったわけじゃないんだからね!」

 キャラクターの魅力は設定や萌え記号ではない。リアクションの出し方によって魅力が変わるのです。
 あとは設定やリアクションを小説として描写するため、具体化してやりましょう。


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