タイムテーブルで映画を分析しよう
その6

              百本見ろ




 いかがだったでしょう。分析とはどうやってするのか。ボクが映画をどのように見ているのか。多少なりとも分かって頂けたと思います。

 創作とは自分の中にあるものを表現によって、外界に出す、アウトプット的な作業です。より良いアウトプットを行うには、まずはそれなりの量がインプットされていないと、やれるものではありません。創作にはインプットがとても大事になります。
 とはいっても、ただ漫然とインプットしていても、創作の役には立ちません。

 映画鑑賞も漫然としていたのでは、あー楽しかったで時間の無駄遣いです。単に娯楽として時間を浪費して終わるでしょう。そうなれば、むしろ薬も過ぎれば毒になる。修業と称して映画やアニメばかり見て、延々と息抜きだけになって、そのうち書かなくなります。確実に。
 インプットするならするで、創作に役立てるという、明確な目的意識が必要です。分析はそのための手段のひとつに過ぎません。

 最後に、どう映画を見るか。創作に役立てるための見方を、いくつかお教えしましょう。
 タイムテーブル分析もそうですが。そんな堅苦しい見方をしていたら、楽しめなくなるという方がよくいますが。あなたはこれから、楽しむ側から、楽しませる側の人間になるのです。
 だったら同業者の仕事を少しでも目で盗む。紹介するのは、その手段です。

【その1】
 あなたがこれから書きたい作品のジャンルを決めてください。決まったら作品の参考が欲しくなりますね。参考にするため、同じジャンルの映画を立て続けに連続で鑑賞するのです。
 映画は二時間という区切りがあるので、構成を参考にしやすくなっています。格好の教科書となるでしょう。

【その2】
 これこそ時間的制限のある社会人にはできない、暇な時間のある学生にしかできない映画鑑賞法です。あえてB級ダメ映画を見ましょう。
 名作映画は当然ながら、名作ゆえに大勢の人たちが見ています。けどダメ映画こそ、あまり余人の見ない、レアなネタになるでしょう。具体的にはそう、サメ映画とか、サメ映画とか、サメ映画とか(後略)
 そしてダメ映画はストーリー構成もダメダメだからこその、ダメ映画。しかも低予算で撮影されているから、モチーフにもシーン数にも限りがある。
 ならば構成を学んだあなたが、撮影されているパーツを並べ直して、どうにかクオリティを上げられないか。試しに再構成してみましょう。悪例を見ることも勉強になりますよ。
 ダメ映画に当たってしまい、人生の貴重な時間をドブに捨てる経験も、映画鑑賞の醍醐味。レッツ、駄目映画。あ、ボクはもう、あんな拷問は勘弁。

【その3】
 タイムテーブルで分析する際、あなたは一緒にメモを取っているはずですね。そのログは保存しておきましょう。映画館での鑑賞でメモを取る暇がなかったというのなら、序破急の三段階だけで構いませんからログを残しておきましょう。
 できれば更に、印象的だった名シーンがどんなだったか。登場人物の特徴と、やはり印象に残った名セリフなど。
 自分がいつ、どんな映画を見たのか。後からすぐ思い出せるように、ログを残しておきましょう。すると後日、自分が物語を作っている時に、過去に見た映画から自由な箇所を引用できるようになります。
 例えば、登場人物に『ムーンリバー』という曲の歌詞から、一部を引用した台詞を喋らせる。すると相手は「『ティファニーで朝食を』だね」と映画の題名で反応する。
 ね、なんだかオシャレでしょう? 自分もやれば良かった……。


 創作なんて才能の有無で決まると勘違いしている方がよくいますけど。もし仮に才能なんてモノが実在するとして。だが構成だけは、生まれ持った才能ではどうにもなりません。構成力を決定づけるのは、見て、読んで、書いた、経験の量のみ。すなわち努力次第です。
 クズでも名作でも構わない。ともかくは時間を計りながら映画を百本見ましょう。百本に到達する頃には熟練して、どこがプロットポイントか勘で分かるようになります。


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