筆が止まった場合の対処法(1) 難易度 : ★ ☆ ☆ (初歩) 習得前提技術:描写 |
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「高等な技術」と言う謳い文句ですが、まずは基本から。小説を書く際に役に立つ、ごく身近で簡単なコツからお教えしましょう。 誰にでも経験があると思うのですが。ついさっきまでスラスラと書き進めていられたのに、突然筆が止まってしまった。これからお教えするのは、そんな場合の対処法です。 なぜ筆が止まったのか。原因はふたつ考えられる。 ひとつは、自分がいま何を書いているのか、自分でも良くわからなくなってきたから。 もうひとつは、先の展開を考えながら書き進めていたら、途中から先の展開に詰まってしまい、進まなくなった。 「先の展開を考えながら書き進めていたら、途中から先の展開に詰まってしまった」場合の対処法は別のところでお教えするとして。とりあえずは、ひとつめの「自分がいま何を書いているのか、自分でも良くわからなくなってきた」際の解決方法をお教えします。 気合と根性で乗り越えると言う手段もありますが、それは置いておくとして。 今現在、自分が書いている文章の内容。更にはその前後。できれば、部分に対する全体。それら全てを把握をしながら文章が書けた方が、良いに決まっている。 でも、文章を書くと言う、ひとつの作業だけでも人間の思考はいっぱいになってしまう。ましてや夢中になってしまうと、目の前の原稿用紙しか見えなくなってしまう。あげくは、書いている文章が、脱線しつつあることにすら気づけなくなる。 そのための手法……と言うよりは発想法が『箱書き(ハコガキ)法』である。ちなみにハコガキとは、どのような意味か辞書を引いてみると、こうある。
重要なのは、この説明「2」の方だ。 いきなり長文を書こうとしたり、細かな描写や演出をしながら文章を書こうとしても、なかなか書けるものではない。ゆとりがなくなってしまうからだ。 だがこれが「ハコガキ法」なら、可能になる。 最初に、説明を軽く書いておく。例えば小説なら、書いているシーンの、情景と時間とキャラの行動くらいでしょうか。 もし実際にやってみるとしたら、
くらいでしょうか。 もちろん、状況に応じて、もっと詳細にハコガキを作っても良いし、大雑把にしても良い。 また、ハコガキを作るのは別にシーンごととは限らない。 タイトル・大見出し・小見出し、と見出しを階層ごとに作ってみる。 もしくは、章ごと・段落ごと・行ごと・一文ごと、と入れ子構造でハコガキを作っても良い。 要は、書いていて詰まらないように、軽く説明を書いて準備しておく、と言うことだ。 以上が、ハコガキによる「細部」の書き方だ。単なるプロットを小説文に「広げる」作業や、描写密度調整の練習にもなる。 例えばだ。特に強調したいことがある場合は、やり方を変えながら、3度は繰り返すと効果的だ。そこで
と言うハコガキがあったとしよう。これを描写された小説文として書き直さなくてはならない。 では実際に「怒った」と言う言葉を、手を変え品を変え、繰り返し描写してみよう。以下は実例だ。
「そして……」の後は、殴る描写が続くこととなる。長くなりすぎるので、後は省略させてもらう。これでハコガキにより、文章の細部まで書き込むことが、かなり簡単になったことが、おわかりになれたと思う。 そして次に全体の構成がハコガキにより、どうやって整うようになるのか、だが。 パソコンのエディタでも、ワープロでも、原稿用紙でも、文章を書いている最中は、限られた狭い範囲内しか見えない。長い文章になると、全体が見渡せなくなる。かと言って、全体を把握しながら書くと言うのも、結構難しい。 そこで全体の構成でも、ハコガキ法が役に立つ。やはり重要なのは、いきなり長文を書こうとしないことだ。 ハコガキから複数の文章が展開されるのなら、同時に、ハコガキとは複数の文章をまとめたものでもある、と言うことになる。 ただ単に書き進めているだけでは、構成はバラバラになってしまう。そこで、ハコガキ法によって文章を、いくつかの固まりにまとめる。そうすれば、そのハコガキを並び替えることによって、全体として論脈が整った構成の文章を書くことができるようになる。また、内容が重複している部分もわかるようになる。 つまりは、ハコガキと言う「パーツ」を組み立てて行く発想だ。 以上でお分かりいただけただろうか。 ハコガキとはすなわち、固まりごとに文章を組み立てて行くことで、全体と同時に細部にまでチェックが行き届くようにする方法なのである。 文章を書く際に必要不可欠な「段取り」と言っても良いかもしれない。 自分がいま考えていることを整理してから、文章を書くと言うのは、一見回り道のように思えるかもしれない。だが、結果的には構成も細部もしっかしりた文章を、短時間で書くことにつながることになる。 ただ単に「知識」として、こんなやり方もあったなぁ、と憶えるだけではない。ぜひとも、文章を書く際の「癖」として欲しい手法である。 |
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応用範囲 → 構成 |