【22】 はじめまして今晩は。 ゆーば  2004年7月24日 19時53分

 はじめまして今晩は。楽園Homeから来ました、サークルは文芸部に所属している者です。自分の文章力は風に流されるビニール袋状態ですので、こういう目印になる事を描いて下さっているサイトさんの存在はありがたいです。
 ここに来て早々ですが、質問です。最近ファンタジーと軍事が融合した感じのラノベを書いていますが、読者が飽きない程度の必要最低限の世界観の説明に四苦八苦しています。何かいい方法は無いのでしょうか。それらしい物がありましたら、教えて下さい。
 それでは、失礼します


 ゆーばさんの質問なのですが。実はちょっと答えにくい。
 主旨が「ファンタジーと軍事が融合した感じのラノベ」の書き方なのか、「読者が飽きない程度の必要最低限の世界観の説明」の仕方なのか。ボクには判断しかねる。
 ふたつは完全に同じものと言うわけではないで。
 ですから、いっそのこと両方ともに答えてしまいましょう。

 と言うか……ファンタジーについて語るためには、前提としてキャラクターの理論が必要となる。だから、説明にはかなりの量を要する。いつかは『ファンタジー講座』を開く予定でした。
 詳しくはその時にお教えするとして。今は簡単に、さわりだけをお答えします。

 まずは「ファンタジーと軍事が融合した感じのラノベ」の書き方ですが……実はファンタジーと軍事ものって、相性が悪いんですよね……。
 まず軍事ものとして、リアリティに忠実に戦争を描いてしまうとどうなるか。戦力の圧倒的な悪の魔王軍に対し、戦力の劣る人類は手も足も出ずに、負けてしまう。そんなの考えてみれば当然だ。戦術レベルで考えると、最強の剣を持った勇者だって、何万もの軍勢を相手にして敵うわけがない。
 だから「ファンタジーと軍事の融合」は下手をすると、単なる「異世界での戦記もの」になってしまう。これではファンタジーとしての面白みがない。圧倒的な戦局をひっくり返しうる、英雄がいてこそファンタジーとなる。だが今度は、英雄の存在のために、戦記としてのリアリティが失われることになる。

 そこで、非現実的のファンタジーと、リアルとしての軍事ものと、両者の接点をどこに見出すのか。この解決策は各語り手の問題となる。第三者であるボクには答えられない。ここから先は技術ではなく、アイデアの部類に入る。そんなものボクこそ教えてもらいたいくらいだ。
 実際に「ファンタジーと軍事の融合」に成功した過去の作品を読み返してほしい。かなり巧みに設定を考えてあるのに気付くはずだ。
 例えば『A君の戦争』(富士見ファンタジア文庫)の主人公は、我々の世界では普通の高校生だった少年が、異世界で軍のトップに立つことになる。だが指揮する軍は、不利な戦力しか持っていない。しかし主人公は、その世界では誰も持っていないような思考回路を持っているから、敵の思惑を出し抜くことができる。
 でもそんなストーリー、誰でも考えつけるものではない。

 多分ボクなら、そんな難しいことを考えるのはあきらめてしまう。きっと「異世界での戦記もの」を描くことにテーマの焦点を合わせてしまうだろう。
 具体的には、ファンタジー世界特有の奇想天外兵器を、山ほど出してしまう。その発想の奇抜さで力押しにして、ごまかしてしまう。きっと、それはそれで面白いのではないでしょうか。やり方は色々あるはずです。

 ただここまでは、まだ《発想法》に過ぎない。《技術》ではない。

 次に「読者が飽きない程度の必要最低限の世界観の説明」の仕方です。
 先に結論から言わせてもらうと、世界設定は独立して単品で説明するものではない。小説上の出来事や事物は、ストーリーとして描写するのが原則である。

 ならばストーリーとは何か。物語とは、行為の記述である。つまり世界設定を、キャラクターの行動や、物事の推移で表現する。

 例えば、キャラクターたちの行動を観察しているうちに、ある一定の法則が見え隠れするようになる。世界設定があるから、キャラクターがこのような行動を取ったのだとわかるようになる。
 もしくは逆に、キャラの行動に影響を与えるのが世界設定だと考えても良い。つまり、キャラクターがとある行動を取ったのは、このような世界設定の影響であると考える。
 荒野に住む民であれば、日々を生きるために厳しい規律に従って生活しているだろう。砂漠の民であれば、水を大切にするような文化が生まれるだろう。緑豊かな山に住む民であれば、自然のうちに潜む神々の姿を想像するかもしれない。
 以上のように、キャラクターやストーリーでもって、世界そのものを「ほのめかす描写」を行う。これは『描写講座』で説明した内容の応用だ。

 だから小説内において、世界観として説明できる情報は、かなり限られる。例えばせいぜいが「この世界には魔法と言うテクノロジーがある。魔法には生命エネルギーが必要」と言う程度だ。
 魔法を利用した兵器の数々、なんてのは小道具に過ぎない。それはそれで面白いだろうが。ただ世界観を描くために、役には立つとは言えない。

 あとは構成の問題で、提示する世界設定の情報として、ミステリとサスペンスを繰り返す。
 例えば、魔法とは何か。その正体が明かされたり。
 例えば、今の主人公の能力ではライバルに絶対勝てない。だがあるきっかけで、主人公の能力を応用させられるやり方を見つける。果たして、主人公はライバルに勝てるのか、とか。
 今度はこれは『ストーリー講座』での内容の応用だ。

 ま、つまりボクは何を言いたいのか。描写や構成などの技法を、世界設定の提示方法として応用する。物語として基本的な面白さがあれば、読者は納得してくれるはずだ。
 そしてそのための技術なら、今の段階でも説明してあるので、後は応用次第です。



Back To Menu