視点 その47

      パースペクティブと一人称




 しかし、パースペクティブなる描写技法と、視点や人称とが、どう関係あるというのか。
 人称をパースペクティブで表現しようとすれば、どうなるか。少しやってみよう。

 まず一人称でも特に問題は「客観的な一人称」だ。実は「客観的な一人称」はパースペクティブを使えば簡単に説明できるようになる。
 一人称で描くべきモチーフとは、全てが外界に存在するとは限らない。一人称は普段なら、焦点子と自分とが同化している。これはパースペクティブでいうと、最接近している状態だ。

 しかし一人称のテクニックに、どう描写するか、何を描写するかによって、「まなざし」を通し主人公自身をも間接的に描き出してしまうというものがある。つまりは主人公自身も一人称ではモチーフとなる。
 こうして焦点子が主人公自身を観察しだした瞬間、同化は解除され、焦点子と主人公とに距離感が生じる。その距離感は遠くなると、単なる三人称と変わらなくなる。これが「客観的な一人称」の原理だ。

 つまり一人称には、主人公と焦点子、焦点子とモチーフという。三点の間で伸び縮みする、ふたつの距離があるというわけだ。


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