ストーリー その9

  情報の並べ方
  《ハリウッドのタイムテーブル》その4




 こちらの図を参考にしながら読み進めてほしい。

 ボクは《ハリウッドのタイムテーブル》を優れた構成法だと思っている。今からその、もっとも優れていると思う点と、その理由をお教えしよう。

 ところで《ハリウッドのタイムテーブルの》の図をごらんになっていて、気になったことはないだろうか。
 それぞれのポイントは《ポイントT》、《ミッドポイント》、《ポイントU》と表記されている。「1、ミッド、2」だ。
 ここで疑問が生じる。なぜ「ポイントT、U、V」ではないのか。なぜわざわざ続き番号で表記せずに、《ミッドポイント》などと言うわけのわからないポイントを、「1」と「2」の間に置くのか。
 それは、わざわざこのような表記にするのに、特別な意味があるからだ。
 と言ってももちろん、別に「1・2」であることが重要なのではない。A・Bでも、甲・乙でも、構わない。ただとにかく、指し示すポイントがみっつで一組であってはならない。ふたつワンセットで、間に「何か他のポイント」が入ると言う形にならなくてはならない。
 ここに《ハリウッドのタイムテーブル》における構成の重要点がある。

 ではなぜ「ふたつワンセット」の表記でなくてはならないのか。それは、《ミッドポイント》が、《ポイントT》や《ポイントU》とは別ものであるからだ。
 まず《ミッドポイント》とはどのような意味なのか。直訳すると「中間点」のことである。これは問題ない。
 それに対し、最初と最後に設置されたふたつのポイントは、互いにつながっている。つながっていることを明らかにするために、わざわざ「1・2」などと、ワンセットになるような表記にしなければならないのだ。
 つまり、《ミッドポイント》は別物として区別されなくてはならない。もしくは逆にも言える。《ハリウッドのタイムテーブル》において《ポイントT》と《ポイントU》だけはワンセットのものとして、特別視されなければならない、と言うことだ。

 実はこの《ハリウッドのタイムテーブル》だが、更に簡略化させられる部分がある。その部分とは《ミッドポイント》だ。
 《ハリウッドのタイムテーブル》は、《ミッドポイント》を省略し、《ポイントT》と《ポイントU》だけにしても、本質的に機能することが可能である。
 そのくらい《ポイントT》と《ポイントU》だけは重要で特別なものである、ということだ。これを噛み砕いて言えば、「最初と最後は特別だ」と言うことになる。

 要は、最初に受け手に対してこの作品がどのような面白さを持っているのか提示することと、最後にその面白さについての決着がついていれば良いのだ。
 つまりは、最初に言ったことを、最後まで言い通せ。もしくは、作品の《テーマ》を最初から最後まで首尾一貫させろ、と言うことである。
 もっと簡単に言えば、「最初に言ったことと、最後に言っていることが、違ってはならない」となるだろう。
 この指摘が《ハリウッドのタイムテーブル》を優れた構成法とさせている点と言える。

 これならば、先程の「結論を最初から出す論文」への説明も充分できる。
 理想形として《ポイントT》で「結論が出た」のならば、《ポイントU》で「出された結論はやっぱり正しかった」となれば良いのだ。時間軸としては錯綜しているが、論理展開としてはスジが通っている。これで矛盾はない。

 また逆に悪い例を考えるならば、こうなるだろう。
 とある「結論が出た」と言うのに、「最初に出した結論とは別の結論が出ちゃった」もしくは「最初に出した結論なんてどうでも良くなった」のでは、受け手は何に期待して読み進めば良いのかわからなくなる。もしくは、読み進めていて、肩すかしをくらうことになるのだ。

 そう言えば、『ドラゴンボール』と言う漫画をボクが読んだ時だ。
 後半になると、タイトルにもなっている「ドラゴンボール」の存在が、単なる便利なアイテムに過ぎなくなってゆく。それで読んでいて思ったものだ。
 「ドラゴンボール、関係ないじゃん」と。
 「この作者、思いついたままにストーリーを進めているだけじゃん」と。

 《ハリウッドのタイムテーブル》はそう言った語り手の、構成上における致命的な「うっかりミス」を予防してくれる。優れた構成法なのだ。


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