奥行きのある風景を描こう:8

               注意事項




 シーンの切り替えに関して、いくつか注意事項があります。

 まず、基本的にカットチェンジは、ひとつの舞台に対して、一度のみにしてください。
 例えばカットチェンジを。「遠景→近景→遠景」などと二度行ったとしましょう。途端に風景描写の焦点はピンぼけになってしまい、どこが重要なのか分からなくなってしまいます。

 実例を見てみましょう。

《例:近→遠》
ぱっちりした瞳の印象的な、美人がいる。

《例:遠→近》
美人がいる。ぱっちりした瞳が印象的だ。


 まずはカットチェンジ1回の例文です。
 ……実は、人物の外見描写も、風景描写の応用として行えるんですねえ。参考までに。
 ではこれを、カットチェンジ回数を増やし、ピンぼけにしてみましょう。

《悪例:近→遠→近》
ぱっちりした瞳の美人だ。唇も印象的だ。

 どうしてピンぼけが起こるのか。
 メインで言いたいことが複数入りこんでいる。思わず「言いたいことはドッチやねん!」とツッコミを入れたくなります。
 これは俳句ならば、季語の重複「季重なり」に似た効果といえるでしょう。


 次に、考えてみれば当たり前だと気づかれるかもしれませんが。遠景を近景よりも、詳細に描いてはいけません。だって、遠くて詳しく様子がうかがえないからこその、遠景なのだから。

 もちろん遠景の中にある物に、焦点子の手が届いてはならない。焦点子が立っているのは、近景の中なのだから。
 ただしこれを応用すると、遠景に手が届くようになったことで、そこへ近づいたという。間接的な移動描写を行うこともできるかもしれませんよ。
 難しい手法ですがね。


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