【アフォーダンス/あふぉーだんす】




 「与える、提供する」と言う意味。物体が持つ属性(形、色、材質など)が物体自身をどう取り扱ったら良いかについてのメッセージをユーザーに対して発している、とする考え。

 例えば、ここに椅子の形をした物があるとしよう。それを見て、あなたはどう思うだろう。妥当なところでは、「椅子だなあ」と思う、と言ったところか。当たり前だ。
 しかし、あなたはなぜ、その「椅子の形をした物」を見て「椅子だ」と思ったのだろうか。それは、その「椅子の形をした物」が「座る」と言うアフォーダンスを、あなたに与えているからだ。

 つまり「それ」が椅子の形をしていて、人が座ることが出来ると言う機能を有しているからこそ、人は「それ」を椅子だと思い、椅子として使ってくれるのだ。
 逆にも考えられる。制作者が椅子のつもりで作っても、あまりに突飛な形状をしていて、誰も「それ」を椅子だと思ってくれないと、椅子として使ってくれない。
 そのような、前例のない突飛な形状のモノとは、何の役にも立たないモノだと言うことだ。

 ところで、ここからが難しい話になるのだが。アフォーダンスとは同時に、「差異」でもある。
 どう言うことか。

 単なる石コロも、人によっては武器となる。これは先程のアフォーダンスの説明から理解出来るだろう。だが、単なる石コロが、いつどの瞬間から武器と言うアフォーダンスを有するようになったのか。
 アフォーダンスは、他の物とどう違うのかと言う「差異」から生じる。
 きっとその石コロは、少し尖っていたとか、ちょっと変わった形をしていたのかもしれない。変わっていたから、アフォーダンスを有した。アフォーダンスを有したその瞬間から石コロは、単なる石コロではなくなった。特別な存在となる。

 つまり、「なんでもない」物に対して人はアフォーダンスを与えられない。何らかの意味を持つ特別な存在になるには「差異」が必要である。だが座るための機能を有し、従来の椅子としての形状を踏襲した物でないと椅子ではない、と言うのも確かな話だ。
 これを簡単に言うと、前例のない物は誰も必要としないが、「差異」のない物を人は欲しがらない、と言うことになるだろう。小説に譬えれば、過去の名作のパクリは誰も読まないが、かと言って、あまりに突飛な作品も誰も読まない、と言うことだ。

 そうすると、ピストル型ライターなんて面白い例だ。
 武器としては役立たずかもしれない。だが、ライターを必要とする人にとっては、その武器を模した形状こそが、他のライターとの「差異」となって、興味を引く要因となる。

 無難な物は欲しいと思えない。だが、新奇過ぎる物は役に立たないのだ。



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