偶然の技法 その5



■偶然は意味化される(2)

 そして起きた事件に対して、運命と思えるかどうかは、当事者であるキャラの主観によって変わってくる。例えば、幸運も怠惰で台無しになる。不幸を糧に頑張ることで成功に結びつけられることもある。
 同じことが起こっても、キャラによって事件の持つ意味は変わる。物語の意味は、ドラマは事件の中にあるのではない。人物の中にあるのだ。

 登場人物がその「事件」や「事情」に対し、どのような行動を取るのかによって、ストーリーは進む。もっというならば、事件が起こったことで、キャラの心がどう変わるか。これがドラマであるともいえるだろう。
 だから事件は偶然でも必然でも、どちらでも構わない。そのキャラの問題が表出することが大事なのだから。問題が表出されることで、運命と感じられるようになる。つまりはドラマが動き出す。
 ただ単にイベントを並べてもドラマにはならないのだ。

 以上のように、物語中の偶然は意味化されて読まれるがゆえ。ドラマにおける意味とは、キャラが抱える問題の表出であるがゆえ。偶然の事件は、一作に一回のみしか使ってはならないわけだ。
 そんな「重要な問題」なんて、ひとりのキャラが何個も抱えているわけがないからね。別の問題を扱いたいのなら、違う作品を書けという理屈ですよ。

 と以上ここまで、意味化こそが、偶然のあるべき姿だとして。後で「起こるべくして起こった偶然なのだ」と読者へ思わせるにはどうすれば良いのか。必然性のある事件との関わり方とは、どのようなものなのか。
 残り、いくつか実例を挙げて終わるとしよう。


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