比喩講座 その3




比喩には《例えるもの》と《例えられるもの》があると説明しました。この《例えるもの》と《例えられるもの》は類似関係にある。ですが問題はどう類似しているかという、繋ぎ方には主に二種類のやり方があります。
 ひとつは《同化》。そしてもうひとつを《異化》といいます。

 まず同化とは、認識を過度に自動化し、認識の努力を最大限節約するという技法です。

《例》
「太陽のようにまぶしい」
「暴君にも等しい傲慢さで」

 皆さんも普段から使い慣れた比喩になると思います。改めて説明する必要はないかもしれませんね。
 一応、もう少しだけ説明を加えてみると。《例えられるもの》が元から持つイメージを強化。もしくはニュアンスを付加・補足すると考えれば良いかもしれません。

《例》
「亀のように身を守る」
「怯えた兎のように身を守る」

 上記の実例を御覧になっても分かるように。どんな《例えるもの》を加えるかによって、同じ「身を守る」でもイメージの細部は変わってくるものです。
 ですが同化ではどのみち、使い古された慣用句的な表現になるのは仕方がないのかもしれません。そして、ありふれている発想であるがゆえに、表現としての面白味に欠けるのも確か。
 そこで異化の出番です。

 ちなみに同化とは、異化の対立概念に当たります。
 比喩とは同化効果によって、ズバリ本質をひとことで言い当てるか。さもなくば異化によって、新たなイメージを作り出すか。どちらかになります。




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