物語の速度・規模 その5

        スケールの大きさ




 ところで様々なリズムを見てきて、気づいた人もいたのではないだろうか。
 同じモチーフを描いているのに、時間の流れ方が違う場合がある。かと思ったら、違うモチーフを描いているのに、同じ長さの言説時間でかかれていることもある。
 実際に描写の応用で、同じあらすじなのに、五枚で書け、三十枚で書け、百枚で書け、と分量調整することは珍しくない。

 そもそもモチーフによって時間経過の違いは、どうやって生じているのか。どれだけの描写量にするかを、どんな基準で決定しているのだろうか。
 こうした描写量を決定づける、モチーフの基準を《スケール》という。スケールとは「規模」という意味だ。「大きさ」と考えても良い。

 モチーフのスケールには様々な単位、「ものさし」が当てはめられる。

《例》
物のスケール(大小)、広さのスケール(広狭)時間のスケール(長短)、事件のスケール(重軽)、数のスケール(多少)、濃淡、厚薄、高低、論の正誤、太細、強弱、明暗、早遅、遠近、悩みのスケール(晩飯のメニュー、宇宙の悟り)、他人への影響の深刻さ

 意味として幅広すぎて、曖昧な概念ではあるが。とりあえずは、「スケールが大きい」か「スケールが小さい」か、によってモチーフを判断することになる、と考えてほしい。


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