視点 その42 「視点隠し」の技法(1) |
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さて以上の理論を全て踏まえた上で、視点の応用的な使い方を幾つか紹介しよう。 英語には必ず主語がついて来る。だが日本語は主語を必ずしも使わなくても構わない。前後の文脈と、人間関係だけで、主語を察してもらうのだ。 だから、どちらの言語という優劣がつく話ではない。ただ単に歴史と伝統を積み重ねた結果、日本語がそうなったというだけの話だからだ。 だが主語を使わないことで、下のような文章上のトリックができたりする。
これは、いわゆる叙述トリックのひとつといえるかもしれない。
最初から全ての情報を出し尽くすのが、表現者の能ではない。隠蔽は、情報印象操作において基本中の基本。「情報を隠す」と言うのも、表現のうちだ。 小説技法でいえば、これはつまり黙説法[レティサンス]の一種だといえる。 レティサンスは文章技法の説明に過ぎない。だが主語に関する技法ということは、主体や主観と大いに関わりを持つ。つまりは視点にも応用できるということになる。 |