視点 その43 「視点隠し」の技法(2) |
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さて。ならば「視点隠し」を、実際にやってみよう。
ボクが実際に書いてみた。 この例文はつまり、ゴッドビューで情景描写をやっているとみせかけて、実は一人称の主体が移動していた視線を追っていたのでした、というわけだ。 焦点子の黙説法というわけである。これが視点隠しの技法だ。 ゴッドビューの文章は主観が薄く、これといった特徴を持たない。ゆえに他のあらゆる視点人称と混ぜても、違和感がない。 そうした「特性がない」という特性を利用して、最初は焦点子を隠して文章を進めてしまう。読者もゴッドビューかと思って文章を読み進めてしまう。しかし描かれる情景は移動している。移動しているということは、背後に主体性を持って「移動」している誰かの存在を示唆しているわけだ。 最後に、実は一人称文でした、とネタバラシしてしまう。 この技法は、ゴッドビューとして客観的な事実から入るので、読者は物語内の事象に納得がしやすい。しかも焦点子の「まなざし」といつの間にか同化してしまう。焦点子の見る風景から、主体のキャラクターがいつの間にかイメージできてしまう。 だから視点隠しの技法は、冒頭への導入がスムーズになる効果があったりする。 ただしゴッドビューとして視点を隠している段階から、実は一人称ですよ、ということを意識しておくこと。ゴッドビューだからと、安直に俯瞰視点なんて使ってはならない。 一人称にとって、俯瞰の広い視点は、自分が見えない視野の外まで見えている。つまりはブラインドの向こうを描写していることになる。視点の狂いだ。 ということは焦点子以外のキャラクターの内心もブラインドということになる。一人称で他人の気持ちを勝手に代弁してはならない。基本だ。 つまり注意点といっても視点と、この場合は黙説法の基礎は守る。基本ができていないと、応用もできないということだ。 |