ストーリー その10

   情報の並べ方《序破急》




 これからボクは「理想の構成法」を作ってみせようと思う。作るとは言っても、何もないゼロからはじめるのではない。複数の技法が持つ、優れた部分だけを組み合わせるのだ。作業としては再構築に過ぎない。
 その「部品」となる複数の技術として、今まで《起承転結》と《ハリウッドのタイムテーブル》ふたつの構成法について紹介してきた。
 もう一度思い出してほしい。《起承転結》と《ハリウッドのタイムテーブル》を比較して、共通する点に気付かないだろうか。

 まずは《起承転結》。《起承転結》の《結》は、実は存在しないも同然で、《転》に含まれる。実質、機能しているのは《起》、《承》、《転》のみっつだけと言うことになる。
 次に《ハリウッドのタイムテーブル》。説明のために挙げられたのは、《ポイントT》、《ミッドポイント》、《ポイントU》の三種類だ。

 ところでボクはまだ《序破急》についての説明をしていない。
 そこで《序破急》を辞書で調べてみよう。
 すると
「楽曲構成・番組編成・演出などの理念上の三区分。上演の時間経過に伴う趣向変化の典型を想定したもので、序・破・急は導入・展開・終結とみなせる」
「物事の構成。はじめと中間とおわり」
とある。
 やはり《序破急》もみっつに分けられている。つまり《起承転結》でも《ハリウッドのタイムテーブル》でも《序破急》でも、構成法の基本とは、全体をみっつに分けることからはじまるのだ。

 更にそのみっつを意味の共通したものとしてまとめると、こうなる。

  ・ 序 = 起 = ポイントT
  ・ 破 = 承 = ミッドポイント
  ・ 急 = 転(結) = ポイントU

 これは、物語機能上の働きから《はじまり》、《途中》、《終わり》と言い換えても良い。

 そこで、ボクは「理想の構成法」をこれから作りたいのだが、その説明として便宜上、《序破急》を使おうと思う。
 つまり《序》が物語の《はじまり》を、《破》が物語の《途中》を、《急》が物語の《終わり》を表しているものとする。
 《序破急》は単純化させた構成法のモデルとして、妥当だと考えるからだ。

 また《序破急》は、全ての物語が共通して持つ、ある特質を具体的に表してもいる。


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