コレクションSSを書こう その2

         コレクションSSをやる意義




 皆さんに書いてもらうワンシーン小説、コレクションSSですが。分量としては四百字詰め原稿用紙三枚から五枚程度を目処に考えてもらうと良いでしょう。短編となりますので、「最後まで書き上げる力」の育成にもなります。
 そしてコレクションSSには、いくつかの目的があります。

 コレクションSSの目的のひとつは、設定の活かし方を練習。設定を紹介することにあります。
 例えば「俺の持ってるコレはさー」なんて文章を書いてたとしても、原稿用紙の向こうにいる読者には「コレ」が何かは見えません。それどころか、あなた自身のことを知っている読者なんていやしない、というところから文章とは始めなければいけない。
 書き手である自分を知らない読者にも、分かるように説明する。紹介は文章力にとって、基礎中の基礎です。

 そして、コレクションSSの目的ふたつめ。どんな設定を作るかは、各人の自由です。コレクションSSとは、自分独自の作風を身に付けるための修行法でもありますから。
 得意とは、自分が書きやすい作品・書きたい作品のことではありません。興味あるだけ、一本書けただけ、では作風とはいえない。自称で自分は決められないのです。

《例》
俺ってナイスガイ。

 ならばワンシーンだけとはいえ、例えば百本も同じジャンルの小説を書けばどうなるか。
 例えば、基礎のできている人に、格好良いロボットもの小説の依頼が来たとする。だがその人はロボットものなんて書いたことはない。もちろん基礎ができているからには、それなりの作品は書けるでしょう。
 だが「それなり」では、ロボットでコレクションSSを百本も書いた人には絶対、敵わない。試運転を繰り返し、プロトタイプを量産することで、苦手は解決され、もともとの芸風は習熟します。それが得意・作風というものです。
 そして更に今は未熟で基礎のできていない人が、ロボットもの、ラブコメ、風景描写と、いろいろなジャンルに挑戦したとする。幅広いジャンルに挑戦し終えた時、彼は既にどんな作風でもこなす力量。すなわち基礎力を手にしているはずです。
 そうやってテキストの持つ可能性を追求し、芸を極めた果てにあるもの。それが得意であり、独自の作風[オリジナリティ]なのです。皆さんは既に描写練習問題で苦手を埋めたはずです。ならば次は得意を伸ばす番ですね。

 コレクションSSの目的みっつめ。
 コレクションSSはワンシーンしかない短編です。ですがワンシーンごとのモチーフを決める作業は、長編においてはハコガキを作る作業に通じます。長編とはワンシーンの集まりです。つまりワンシーンがたくさん重なれば、長編になる。
 コレクションSSとは長編を書く前の練習でもあるのです。

 無駄に延々と書き連ねた結果、何となく長くなっただけの作品は長編ではありません。描写、ストーリー、アイデアと、長いからこその魅力が長編にはあるはず。
 まずはワンシーンだけを書いて、目の前の文章に集中する。自分が持つ描写力の全開を知っておけば、勘で作品の分量が全部でどのくらいになるか分かるようになります。いきなり全部を書かないことで、長編でも息切れせず、一定以上のクオリティを保ったまま文章を書き続けられるようになります。長距離走みたいなものですね。
 実はプロットノックやアイデアノックは、このため。将来的な長編書きのためにあったのです。


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