コレクションSSを書こう その11

           コレクションSS実作例




 本当にこんなプロットで小説が書けるのか。試しににボクが書いてみるとしますか。
 材料となるアイデアは以下の通りになります。

●テーマ:彼女の可愛さ。 → 演技:俺は彼女を可愛いと思っている。
●設定:文学少女。 → 演技:図書館で読書中
●リトマス:たくさん本のある図書館。
●リアクション:読書に夢中。→来客にも気付かなかった。

 では以下からが、実際に書いてみた小説です。どこにどう、どのアイデアが使われているか。参考になればと思います。



 生徒会の仕事終わり。夏も始めで日は高くなった。学校の図書館入り口には「閉館」の札が下りていた。だが俺は当然のように、鍵のかかっていない戸を開けて中に入る。
 図書館の中には、ひとりを除いて誰もいない。そのひとりというのが、俺のカノジョだ。先月に告白して、俺たちは恋人同士になった。

 大きく開いた窓から、中庭の光がきらきらと差し込む中。
 彼女はじっと司書席で本を読み続けていた。彼女は図書委員だ。だが人が入ってきたことに気付きもしない。そして彼女は文学少女だった。

 俺は彼女の正面に置いてあった椅子に座る。まだ彼女は俺に気付かない。仕方がないので彼女の顔をじっと見つめることにした。
 伏し目がちな視線は本にのみ注がれて、こちらを向こうとしない。ふっと、読んでた内容が面白かったのだろう。口元が緩んだ。柔らかそうな唇。
 顔を近づけていって……よしキスしてやろう。我ながらナイスアイデア。すると当然ながら俺の顔が邪魔で本が読めなくなるわけだ。そこで俺に気付いた彼女は驚いて、悲鳴をあげた。

「黙って近付くなんて、ひどいですよお」
 下校路を共に歩きながら、俺は彼女に平謝りしていた。
「ごめんごめん。だけど一緒に帰ろう、って約束してたのに。待ち合わせに来ない君だって悪いんだからね」
「うっ、それに関しては申し訳ない。ついつい夢中になって。ごめんね?」
 彼女は文学少女だ。そういう姿まで含めて俺は彼女を好きになった。だから別に怒ってはいない。むしろ、ご馳走様と感謝したい。
「いつものことだし。許したげるよ」
「あっ、だけど。顔を近づけて、何をしようとしてたの?」
「何をしようって……キスしようとしてた」
 途端に彼女は驚き、そして恥ずかしさで顔を真っ赤にする。観察していて飽きない。
「きっ、キスしようとしたって。どうして」
「コチラも夢中になっちゃってさ、仕方ないじゃないか」
「だったら仕方ないか。あれっ、でも夢中って、何に?」
 彼女は首をかしげる。俺は彼女にそっと耳打ちした。
「……に、だよ」
 なんのことか、ゆっくり理解すると、彼女は持っていた本で顔を隠してしまった。
「やっぱり君はヒドい人だよう」
 その仕草が堪らなく可愛くて、思わず更に意地悪したくなってしまうくらい。どうやら俺は彼女に夢中らしい。


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