タイムテーブルで映画を分析しよう
その4

         映画分析実例:前




 では『ゴースト ニューヨークの幻』の分析を実際にやってみましょう。はまさんという人間には、この映画がどう見えているか、という参考になればと思います。
 あ、以下はネタバレになりますから未見の方は注意を。

 まずこの映画、要約すると「自分を殺した相手を、幽霊になって仕返し」が本筋になっている。実はラブストーリーとしてのプロットを持っていないんですよね(笑)
 ならば、どうやってラブストーリーとして成立させているか。実際に見てみましょう。


【0〜9分】
 引っ越し。導入。

【9〜11分】
 寝室。飛行機事故のニュース。幸福を失うという伏線・前兆になっています。またプロットポイントTに続く伏線でもある。

【12〜14分】
 この映画のキモですね、ろくろ回し。既にラストシーンへの伏線が張られています。

【18〜20分】
 結婚を申し出ますが、断られます。物語機能論でいうところの《招命の辞退》ですね。と共に「なぜ言葉にしない?」「愛してるの乱用は嫌い」と物語全体を動かすキーワードが出てきます。

【20〜22分】
 敵の登場。乱闘の末に殺され、ゴーストになる。
 余談ですが。気がついたらゴーストになっていたという、日常から非日常へシフトする。その瞬間の描き方が秀逸だと思います。大好き。

【24〜26分】
 病院。他のゴーストとの出会い。レクチャー。悪い霊がどうなるかは、あえてまだ見せていない。つまりは後半へ続く伏線となっている。

【27〜29分】
 葬式。実はここがプロットポイントTになっています。つまり、主人公が死んでからが物語の開始というわけですね。

【29〜34分】
 猫が反応して、もしかしての可能性が。遺品を片付けていると、強引なカールの侵略が。しかも自分を殺した相手が、なぜか家に。主人公に戦う動機付けが生じます。

【34〜36分】
 追いかけると、駅で悪霊がガラスを割るのに遭遇する。前のシーンで猫に干渉したりと、反撃の手段があることを示唆します。

【36〜38分】
 殺人鬼の名前が判明。黒幕の存在という謎も出てきます。そして「彼女に手を出すな」と、物語の目的も明確になりました。
 ここに至るまでに、猫という反撃手段のヒント・伏線があるからこそ、動機への感情移入がしやすくなっているわけですね。

【38〜47分】
 迷った末に、オダ・メイとの出会い。『ドラゴンクエスト』でいえば、「ルイーダの酒場」ということになるでしょうか。戦う決意をした主人公に、戦う手段が与えられます。
 というとオダ・メイがアイテムか何かのように思われるかもしれませんが。物語機能的には確かに、アイテム扱いではあるのですな。ただ、「単なるアイテム」が物語を通すことで、どこまで「キャラクター」になれるかが脚本家の腕の見せ所になります。
 またオダ・メイという「援助者」と出会うまでに、主人公は道に迷います。見知らぬ土地ゆえに、新たな出会いがある。物語機能論的には「迷いの森」もしくは「クジラの体内」といいます。色んなコトが一気に起こって迷うことで、誰かと出会う伏線にしているのです。
 ま、ボクはこの「クジラの体内」、御都合主義すぎて個人的には好かないんですけどね。

【50〜51分】
 18分からの伏線ですね。「愛してる」のセリフ。ですが、今はまだ上手く機能しません。
 主人公が葛藤や戦いといった変容を経てからでないと、「愛してる」にも魂がこもらないからです。

【57〜60分】
 これは分かりやすい。ミッドポイントになります。カールと犯人との繋がり。黒幕の正体。物語後半、復讐へと動機は強化されます。


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