視点 その11

   視点のフレーム(2)




 では5つの視点の位置を、にしてみた。こちらを参考にしながら読み進めてほしい。
 外側の黒い太枠は、物語内外の区切りを。人の形をしたものは、物語内の登場人物を。赤い文字のアルファベットは、焦点子の位置を。それぞれ表している。
 そして各焦点子は、

 ・A:物語内登場人物内視点
 ・B:物語内登場人物外特定視点
 ・C:物語内登場人物外不特定視点
 ・D:物語外視点
 ・E:物語外登場人物内視点

に相当する。
 《物語外》と《登場人物内》を行き来している、Eの矢印については、まだ気にする必要はない。あとで説明しよう。

 この図からわかることを補足しておくと。
 まず、物語の登場人物は、必ず物語世界の内部に属している。だから《登場人物内視点》は、(ごく一部の例外を除き)必ず《物語内視点》となる。
 次に、《登場人物内視点》は、他の《観点》でモチーフを見ることはない。つまり、登場人物の中から動けないので、必ず《特定視点》となる。

 そしてここからが重要なのだが。
 観察は、焦点子から、モチーフに向かって行われる。モチーフから焦点子自身へ、逆行することはない。

 だからまず、《物語内視点》の焦点子は、物語外を知り得ない。
 すると一人称で「俺たちをあんな悲劇が襲うなんて、今はまだ知らなかった」と言う一文はありえない、と言うことになる。これは《物語内視点》ではなく、《物語外視点》による文章である。なぜなら物語内の存在には、未来に起こる出来事を知りようがないからだ。
 物語外にとっては《物語内》の全てが既に、描き出すべきモチーフなのである。

 これはまた、自分自身を客観的に知ることができない、と言うことでもある。人は、自分で自分の姿を見ることはできない。ゆえに「私は可愛い」とか、「俺は青ざめた」と言った文章はありえない、と言うことになる。
 自分で自分の姿を見ようと思っても。鏡や他人を通して、間接的にしか自分を知ることができない。

 このことに関してはまだ、もう少し詳しい説明が必要となるだろう。


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