視点 その20

     物語外視点とは何か




 物語外視点とは何なのか。当講座で既に先述した箇所を再確認してみよう。
 焦点子が物語世界の外に存在していた場合に《物語外視点》となる。これは例えば、全知全能の神様や、物語の内容を回想する語り手が、焦点子であった場合に相当する。物語内の世界には存在しない、無関係な焦点子が《物語外視点》だ。
《視点10より引用》

 固定視点ならば、特定のキャラの主観だけを出せば良い。だから主観の在処に困ることはない。だが不特定視点になると、どう主観を出すかに困ることになる。
 ならば物語外視点はどうなるか。物語外視点は、不特定視点でありながら同時に、とある焦点子に固定されて限りなく特定視点に近くなる。その焦点子とは、いったい誰の主観なのか?
 実は物語外視点とは、物語の作者が好き勝手に語っている状態を言う。「物語外視点=作者の視点」なのだ。物語内に対しては不特定であっても。作者自身の主観による視点文だから、ある意味で固定視点といえるのだ。

 物語外視点すなわち、作者の視点が小説内でどう使われるか。いくつかの例を紹介しよう。

《物語外視点の実例》
●「その時はまだ彼ら(私たち)は、行く手に困難が待ち受けているとは思いもよらなかった」
●「ところで私は作者だが……」
●「これについて読者である、あなたはどう思うだろうか」

 上のような文章を読んだことが、皆さんにもあるのではないだろうか。物語外視点を使うことは難しくない。むしろ素人こそ多用しているのを見かける。
 だが物語外視点は、得られる効果が難しい上に、使いようによっては大失敗になってしまう。容易く使おうとしてはならない。かなり条件は限られるが、使用方法というのがあるのだ。


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