視点 その26

   やってはいけない物語外視点(2)




 改めて視点と人称における基本事項を確認しよう。
 モチーフから焦点子に観察は逆行しない。だから登場人物が作者の視点を知ることはない。

 ただし一人称においては、一人称の「わたし」と、物語外の作者である「わたし」とは、限りなくイコールの存在に近くなる。
 だから物語外視点といっても、実は回想文の一人称だったのが、そこだけ「今のわたし」に戻るなど。効果としては「客観的な一人称」と変わらない。
 やはり物語外視点は三人称独自の手法と思った方が良いかもしれない。

 物語外視点はあくまで特殊技法だ。使うなら一文に抑えるか。全体的に使うなら講談調の実験作だと割り切って使おう。


 物語外視点という存在を知ってもらえば理解していただけるだろうが。一人称も三人称も突き詰めれば、「作者の語り」となる。だから一人称が書けない人間は三人称も書けないし、三人称が書けない人間は一人称も書けない。代わりに、一人称が書ける人間は三人称も書けるし、三人称が書ける人間は一人称も書けるようになる。
 だから「簡単だから一人称で書こう」というようなスタンスは間違っている。単なる怠けだ。一人称の難しさは三人称と変わらないし。そもそも「作者の語り」が難しいのだ。


← Return

Next →


Back to Menu