視点 その27

   ゴッドビューの客観性(1)




 ところで物語外視点とよく似た存在に、「神の視点」とか「ゴッドビュー」と呼ばれる視点がある。この物語外視点とゴッドビューとはどう違うのだろか。
 物語外視点のメインモチーフは作者自身だ。だから自己言及になりやすく、どうしても視点が狂いやすくなる。
 対してゴッドビューは物語内視点ゆえ、ブラインドの位置にさえ気を付けていれば、そうそう視点は狂わない。ただし味気ない文章になる。いってみれば、何の効果も期待できない文体こそがゴッドビューといえるかもしれない。

 ゴッドビューは物語内視点ではあるが、どのキャラクターにも特定しない、物語内不特定視点となる。
 ゆえにゴッドビューはどんなアングル、誰の目線からでも、どんなモチーフでも描写できる。そこが物語外視点に似ている点だ。ただし、主観的すぎる描写は許されない。ゴッドビューで主観描写をすれば、それは物語外視点つまり作者の視点と化して、途端に視点の狂いが生じてしまうからだ。

 なのでゴッドビューは主観の排された、できるだけ客観的な、いわゆる無人称となる。文体としては、科学研究者の観察記録が近くなってしまうかもしれない。
 しかもゴッドビューは「神の視点」というくらいだから、どうしても「上から目線」な文章になってしまう。無人称は誰の立場にも肩入れしない。赤の他人の立場で物事を話すのだから、そりゃ上から目線になってもしょうがない。

 というわけでゴッドビューの文章は読んでも、感情が篭もらないという欠点がある。仕方がないから気づかれないよう、ところどころを登場人物視点で、コッソリ書くことでその欠点を補うのが常套手段になるだろう。


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