ストーリー その17

   語る順序の魔法 実例2




 これがストーリー講座で最後に教えることとなる。今までの構成法を使って、ラブストーリーを作ってみよう。

  男と女は出会い、恋をした。

 これがラブストーリーにおける、もっとも簡略化された「あらすじ」である。出会わなければ恋も出来ないし、出会っても恋が芽生えなければラブストーリーにならない。ゆえに出会いのシーンが省略されたラブストーリーは存在しても、出会っても互いに何の感情も沸かなかった、と言うラブストーリーはありえない。
 またこれは以下みっつの行動要素に分類できる。

  ・ A : 男と女がいる。
  ・ B : 男と女は出会う。
  ・ C : 男と女は恋をする。

 この物語に「なぜ?」と言う《ミステリ》や、「どうなる?」と言う《サスペンス》組み込むことで、単なる「おはなし」に過ぎなかった《シノプシス》が、娯楽(ドラマ)性を持った《プロット》となる。
 いや違う。恋はそれだけじゃない。別れたり結ばれたり、波瀾万丈でいろいろな事件が起こるはずだ。そのような意見もあるだろう。
 だが別れたとか結ばれたと言うのは、《C》において恋をした結果である。つまり、そのような機能は《C》での《サスペンス》に含まれる、と言うことになる。
 つまりラブストーリーにおける面白さとは、分類した行動要素《B》と《C》に、《ミステリ》と《サスペンス》を掛け合わせることで、以下の4要素に分けられることになる。

  ・ B1 : 男と女はなぜ出会ってしまったのか?
  ・ B2 : 出会った男と女は、これからどうなるのか?
        (→恋をするに決まっているが)
  ・ C1 : 男と女はなぜ恋をしてしまったのか?
  ・ C2 : 男と女は出会い、恋をして、それからどうなったのか?

 しかしこの理論を実際に使うとなると、どうやれば良いのか。
 そこで「見合い結婚」をモチーフとするラブストーリーで、「父と母はお見合いで結婚した」と言う《シノプシス》の物語を実際に《テーマ》化してみよう。
 すると、前述の4要素に当てはめることで、この物語の面白さはどこにあるか。理解できる。

  ・ B1 : 父と母はなぜお見合いをしたのか?
  ・ B2 : 父とは母は、お見合いをしてどうなった?
        (→結婚したに決まっているが)
  ・ C1 : 父と母はなぜ結婚したのか?
        (→お見合いをしたから、なのだが)
  ・ C2 : 父と母はお見合いをし、結婚して、どうなったのか?

 以上が「父と母は見合いで結婚した」と言う物語において、語るに値するポイントである。「このように」語ることで、この物語は、受け手の興味を引くことができるようになる。
 良く自分の経験を、ありきたりでつまらない。お見合い結婚なんて、ありきたりでつまらない。と無根拠に思い込んでいる人が多い。
 だが実際は、そんなことはないのだ。「語りよう」なのである。


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