ストーリー その6

  情報の並べ方
  《ハリウッドのタイムテーブル》その1




 次に《ハリウッドのタイムテーブル》について説明しよう。
 その前に、《ハリウッドのタイムテーブル》とは何なのか、教えなければならない。

 ハリウッド映画の制作には、多くの人と、資本が関わっている。損失を出すわけにはいかない。そこで、映画制作者は映画がコケた時のために、保険をかけている。すると保険会社も、映画に失敗してもらうわけに行かなくなるから、映画制作に口を出すことになる。どのように口を出すかと言うと、とりあえず無駄なシーンを削らせる。上映時間が短ければ、一日当たりの興行回数が増え、客の回転が早くなるからだ。
 ハリウッド映画の、特にアクションものなどは、どれもこれも似たりよったりだ、と言うような悪口がある。だがそれは無駄なシーンが極限まで削られた結果なのだ。
 また似た映画が多いと言うことは別に悪いことではない。日本でも、代表的なところでは『水戸黄門』なども、基本的には繰り返しのストーリーだ。似たものが多いと言うのは、洗練された結果でもあるのだ。
 そこでたくさんの映画を比較し、何分になにがあるのか、公約数的な共通項を抜き出してゆく。すると、映画の中でいつ何が起こるのか、また起こるべきなのかを導き出す予定表のようなものが出来上がった。
 これが《ハリウッドのタイムテーブル》だ。

 さてその《ハリウッドのタイムテーブル》について実際に見てみよう。こちらを参考にしながら読み進めてほしい。随分と簡略化はさせてあるが、要点は押さえているはずだ。

 左側の「何分」と言うのは、映画内の時間を指している。
 ここではあえて、120分の映画を例として挙げているが、これは何分の作品でも構わない。90分の映画でも、60分のドラマでも、30分のアニメでも、要は同じだ。全体を四分の一に区切った、その区切りの三カ所さえ押されば良いのだ。
 これは同じ要領で、文章でも可能となる。時間を、原稿用紙の枚数に置き換えれば良いだけの話だ。

 次に、みっつある「ポイント」より右側の説明だ。これは、ちょうどその瞬間、何分目かに映画で何が起こるのかを指している。と言っても、ちょっとわかりにくいかもしれないので、ふたつの実例を挙げよう。
 先程の《ハリウッドのタイムテーブル》の図を参考にしながら見てほしい。

 例1:『ET』
  《ポイントT》 ETと出会う。
  《ミッドポイント》 ETのことをみんなに知られてしまう。
  《ポイントU》 ETを宇宙に戻す。


 例2:『ターミネーター』
  《ポイントT》 ターミネーターに襲われる。
  《ミッドポイント》 自分の使命を知る。
  《ポイントU》 ターミネーターを倒す。

 随分とわかりやすいのではないだろうか。流石は功利主義の国アメリカの産物だ。良く出来ているとボクも思う。
 みんなも出来れば、今度からハリウッド映画を見る時は、タイムウォッチでも手にしながら、見てほしい。構成力が身につくこと請け合いだ。ボクもやった。今でも癖になっている。


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